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2006.01.29

歴史に残る大名盤だ(矢野沙織: PARKER'S MOOD CD評)

PARKER'S MOOD 2005年11月23日発売、矢野沙織の4thアルバムPARKER'S MOODを聴いた。発売翌日に買ったから2ヶ月経つことになる。以来毎日のように聴いているが全く飽きない。素晴らしい。

 初めて聴いたとき、1曲目のI Got Rhythmのその出だしから参ってしまった。実際のライブでもこの曲は第1ステージの1曲目だったという。こちらの体はまだ温まっていないというのに、パワー全開のブローでぶっ飛ばされたという感じだ。

 特に印象深かったのは1曲目の他、6曲目 Bohemia After Darkと7曲目 A Night In Tunisia。この2曲は他の人の演奏で、曲自体を知っていた。知っている曲を聴きたいというミーハーな理由もあるが、決してそれだけではなく、この演奏のどの部分がアレンジなのか区別できるというのもある。知らない曲だと今聴いている演奏をオリジナルとして理解してしまうからだ。体全体でぶつかってくるようなアドリブは何度聴いても気持ちがスキッとする。

 個人的には、アルトにピアノ,ベース,ドラムスと編成も良い。前々作「04」と前作「SAKURA STAMP」では、(私が好きではない)ギターが入っていた。さらに前作ではベースが無くてハモンド・オルガンという楽器まで入っていた。ギターだけでも宙に浮いたような感じがするのに、その上ベースに代わってハモンド・オルガンまで入ってはフワフワして足下がおぼつかない気持ち悪さがあった。その点本作は、ピアノトリオをリズムセクションに迎えたシンプルなカルテットである。

 そのリズムセクションが全体を通して皆好演しているのも見逃せない。矢野のサックスが好調なのもこのリズムセクションによるところが大きいだろう。前々作04では、ドラムスの演奏が今ひとつのように感じたと書いたが、今作のドラムスはジミー・コブ。さすがと言うべきか。そのジミー・コブをして、日本のキャノンボール・アダレイと言わしめた矢野沙織。もう女性・高校生などという話題性、そして場合によっては甘さのエクスキューズとなるような形容詞は必要ない。日本のキャノンボール・アダレイという絶賛フレーズさえ不要な気がする。いまや演奏の各所にパーカーでもキャノンボールでもない、まさに矢野沙織節が感じ取れる。キャッチコピーなし。矢野沙織、ただその名前だけでビッグネームの仲間入りだ。

 このライブが行われた2005年7月25日のニューヨークのジャズクラブSMOKEで、生でこの演奏を聴ければどんなに感動的だっただろうと思う。私の保有するジャズアルバム(100枚程度だが)の中でも、1,2を争うお気に入りに名を連ねるだろう。個人的には歴史に残る大名盤だと言いたいところだが、少なくとも矢野個人の最高傑作になるのではないかと思っている。しかしまだ18歳。これからの人に、これが最高でこれ以上の作品はできまいというのは大変失礼な話である。是非裏切って欲しい。

 またアルバムの本質ではないが、ジャケットの写真も、矢野のあどけなさが出ていて、2005年の18歳の矢野を記録した写真として秀逸だと思う。

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