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2005.10.30

[書評] 遺伝子で探る人類史

ジョン・リレスフォード:遺伝子で探る人類史,講談社,2005

遺伝子で探る人類史 本書が扱っているのは、数百万年前から数千年前にかけての人類の歴史である。これまでの学問の枠組みでは、数百万年前から数万年前という年代は人類学の範疇で、主に発掘された骨を手がかりに人類の進化の道筋を明らかにしていくものであった。また考古学と呼ばれる学問は、発掘によるという点では同様であるが、主として人類が文明を築き上げた数千年前以後を対象にしている。ここで空白になってしまうのが、解剖学的には現世人類と区別が付かないが、文明には到っていない数万年前から数千年前の年代である。この年代は人類が世界中に拡散し、また農耕が生まれ、文明前夜と呼べるような人類の歴史にとって重要な時期であるが、学問的には人類学と考古学の隙間になる。身体の特徴や言語の比較といった手法が用いられているが、人類のあけぼの,文明の始まりといった派手さがないし、また文系と理系の境目のどっちつかずな所も研究が進まなかった理由であろう。
 本書では、近年目覚ましい進歩を遂げている遺伝子工学を用いて、人類のあけぼのから文明の始まり前夜までの人類の歴史を追いかける。新しい技術というのはその分野だけで有用なのではなく、実は他の多くの人も潜在的に待ち望んでいるものである。例えばインターネット技術の出所はコンピュータ分野であるが、今では、それまでコンピュータなど触ったことがないという人にまで利用されている。遺伝子工学も、当初の最先端の科学者が考えも付かなかった利用のされ方をするであろう。考えも付かなかったとまでは言わないが、これまで道具が無くて扱えなかったこの空白を埋め、さらに研究の発展に大いに貢献する、待ち望まれた技術であることに異論は無かろう。
 書き方としては、扱う範囲が広いからか、少し駆け足的で結論を急ぎすぎている気がする。また人類学だと思って読んでも、文明前夜の人類の歴史だと思って読んでも、少し物足りない気がする。しかしそれは私自身が既成の枠組みに捕らわれているからで、新しく生まれつつある「人類遺伝学」だと思えば、適当なのかもしれない。しかしまとめが1ページ半なのはやっぱりいただけない。非常に長いスケールで話を進めてきたのだから、全体を総括しての1章分のまとめは欲しい。この辺りは学問的にも著者自身もまだまとまっていないのかもしれない。
 ブルーバックスは、最初は中学生の頃に親に買ってもらって読んで以来、時々思い出したように読んでいる。これまでブルーバックスは、章ごとや節ごとに完結する類の啓蒙書というイメージであったが、本書は1冊で1つの論とする一般解説書の体裁である。本来新書として発売されてもよい内容だと思うが、ブルーバックスっていつからこういうカラーになったのだろうか。☆☆☆

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