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2005.09.08

[書評] ケプラー予想

ジョージ・スピーロ:ケプラー予想,新潮社,2005

ケプラー予想 大砲の弾やスイカといった球体を最も効率よく詰め込む(球の最密充填)にはどのように詰めたらよいのであろうか。実用上最密と思われているのは、正三角形に並べた3つの球によってできる窪みに4つ目の球を置く六方最密充填と呼ばれる方法である。この積み方はケプラーに言われずとも、果物屋であれば誰でも使っている。ケプラー以前から漠然と最密と思われてきた配置を、ケプラーは1611年にこれが最密であるという予想を立てた。しかしそれを証明するとなればそれほど簡単なことではない。そしてこれが証明されるのに387年という年月を要したのである。
 1900年にパリ万博に合わせて開かれた国際数学者会議において、当代随一の数学者ヒルベルトは「数学の諸問題」との題で、20世紀に残された23の数学上の未解決問題を取り上げて講演を行った。その18番目の問題のその3としてこのケプラー予想が取り上げられている。ここに登場する23の問題のほとんどは、私のような素人にとって問題の意味さえ解らないであろう。またフェルマーの大定理のように問題の意味は解るが、答えの予想は着かないというのもある。しかしこのケプラー予想に関しては、果物屋はおろか私でも問われればこの配置を答えるであろう。それが何の役に立つのかという高等数学全般に向けられる疑問は、フェルマーの大定理のような数論に向けられることが多いが、このケプラー予想も実用上の解が得られているという意味において、この問題にも向けられるであろう。
 このケプラー予想の物語の思わぬ展開は、それがコンピュータの力を借りて証明が成されたという点である。もちろん力ずく数値的に解いても証明にはならないから、そういう意味で使われたわけではないが、さすがのヒルベルトもこういう証明が成されるとは思っていなかったのではないか。ただし現在示されているよりももっとスマートな証明が成される可能性はある。
 誰もがケプラー予想が正しいと思っていた。ただそれを証明できなかった400年。誰もが答えを知っている問題を証明するのに、これほどの苦労を要するとはケプラーも予想していなかったのではないか。☆☆☆

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