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2005.09.19

[書評] 共感する女脳、システム化する男脳

サイモン・バロン=コーエン:共感する女脳、システム化する男脳,日本放送出版協会,2005

共感する女脳、システム化する男脳 科学というものは本来、その時の国家体制や宗教観や流行とは独立のものである。しかしそれが社会に向けて発表される以上、その時々の社会情勢に無縁では居られない。新たな発見が既存の価値観を覆すようなものであれば、それは細心の注意を払って発表しなければならないのである。その最も著名な2つの例は地動説と進化論であろう。どちらも、人間だけが神に選ばれた存在とされていた時代に見いだされ、時の指導者や教会などから大変な迫害を受けたと言われている。
 本書は男女の発想のパターンの傾向を述べた著作である。男女平等が声高に叫ばれる昨今、男性と女性の脳に違いがあると述べることは、ある意味大変勇気の要る行動である。地動説や進化論ほどのパラダイムシフトではないにせよ、一歩間違えばガリレオ裁判の二の舞になりかねない。科学的な思考をできる人であれば、生物としての差異と人間としての権利の平等は分けて考えられるのだが、世の中そんな人ばかりではない。そんなことから著者は、あらぬ誤解を受けないよう文章の端々に「男女の違いを示してるだけで、どちらがより良いと言っているわけではない。」との意味の言葉を挟んでいる。
 しかし私には、そんなことに気を取られ過ぎていて、肝心の内容が少し浅いように思われる。進化の過程で、男性はシステム化することが、女性は共感することが、淘汰されずに残ってきたのであるが、そこの説明がかなり足りない。進化論については多少本を読んできた私でももう少し突っ込んだ説明ができると感じた。また極端な男性脳の発現形として自閉症が挙げられているが、極端な女性脳の発現形は不明であるという。何でも共感してしまう極端な女性脳は生活に支障が生じないから医師などの診断を受けない、だから発見されないというのがその理由である。しかし医師の診断を受けるかはともかくとして、極端な女性脳というのは、人の言うことをすぐに信じてしまい、よく騙される人ではないだろうか。良くも悪くも女性は流行に敏感で、宣伝に反応し、あなたを幸せにするという言葉を信用して結婚相手を決める。完璧な女性脳であれば騙そうとしている人の心も見抜いてしまうのだろうが、極端だが完璧でなければ、表面的な言葉や宣伝に疑いを持たずに共感してしまうであろう。この辺まで突っ込んだ議論が欲しかった。若干尻切れとんぼだ。☆☆☆

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