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2005.08.03

[書評] 文明が衰亡するとき

高坂 正堯:文明が衰亡するとき,新潮社,1981

文明が衰亡するとき
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
奢れる人も久しからず。ただ春の夜の夢の如し。
猛き者も遂には亡びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。

 有名な平家物語の冒頭である。栄枯盛衰が世の常であることは誰もが知っているが、自らもその世の常に含まれているのだということに、人はなかなか気が付かない。
 本書が取り上げている文明は3つあり、3部構成になっている。第1部が古代ローマ帝国で、第2部が中世ヴェネツィア、第3部が現代アメリカである。いずれも文明と言えるほど影響力を及ぼした国々であるが、本書の内容からは国家という方が適当かもしれない。
 ローマはあらゆる意味で古今東西最も研究されてきた国家であろう。長期間にわたって強大であったために、その衰亡論に関心が集まってきたのも不思議なことではない。本書でも過去の研究を無視して話を進めるわけにはいかないので、どうしても著者自身の考察の出番は少ない。
 アメリカは現代の国家であり、現在の世界帝国であるから、奢れるアメリカ久しからずという論は数多い。しかし本書は1981年の著作なので、現代国家の衰亡論としてはいくらなんでも古くなり過ぎている。ベトナム戦争には敗北した。ドル安は進んでいる。これらを衰亡の予兆としているわけだが、一方で自己中心主義を改めればまだまだ持ち直すだろうとも言っている。24年経つ間に、円高がさらに進みマンハッタンのビルが日本に買収されたりもしたのだから、1度は衰亡したのかもしれない。しかしすでに時代は1周し、1度は改めたはずの自己中心主義も再び首をもたげ、今度はイラクで泥沼にまみれている。
 本書の中で最も興味深いのは、第2部のヴェネツィアである。ヴェネツィアは都市国家でありながら、海上貿易を主体に地中海でもっとも影響力を持つ国となった。しかしいくら中世と言えども、400年にも渡って栄えているうちには時代も変化する。ヴェネツィアが衰退した原因の大部分は、時代が変わってしまったことである。もう1度歴史をやり直しても多分どうにもならないであろう。こういう部分はあまり後世の参考にはならない。しかし選択を誤った部分も多くある。日本はヴェネツィア同様、資源を持たない通商国家であるから、ヴェネツィアの教訓は最も生かされて良いであろう。☆☆☆

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コメント

トラックバックさせていただきました。岐路に立つ日本が考えるべきことを歴史から説明したいい本だと思います。

投稿: 竹花 | 2005.09.28 13:01

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