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2005.07.21

[書評] 希望格差社会

山田 昌弘:希望格差社会,筑摩書房,2004

希望格差社会 戦後の高度経済成長時代がバブルという最後の花を咲かせて散って以降、現在の日本は先の見えない不安な時代と言われている。これは社会の様々な場面で、これまでの価値感が通用しなくなってきているためである。
 これまでの日本は、経済的には恵まれていなくても、人並みに努力していれば自らの将来像が描ける社会であった。現在、経済的にははるかに恵まれており、さらには職業や結婚相手を自由に選ぶこともできる。しかし自由な選択ができることと、希望が叶うことは別問題であり、勝ち組・負け組の格差が生まれるようになった。自らの努力で埋められる格差であれば自由競争の結果と納得もできるが、今の日本には個人の努力ではどうにもならないような格差ができており、それが拡がっているのである。努力しても結実するかわからない、さらには努力しても仕方ないと思わせる社会、これを「希望格差社会」と著者は命名している。お金がないのではない。希望がないのである。人はパンのみで生きているわけではないのである。そしてこれは社会の構造的な問題であるので、経済が回復しても解決しないと指摘する。
 本書は、これは著者の長年の調査研究に基づく確固たる成果の集大成であると考える。しかしようやくまとめた成果を背伸びして著したものではない。著者自身が一度組み立てた持論を、噛み砕き直して著しているはずである。それは章立てや論旨の展開に否の打ち所がない無いところに現れている。持論に陰りがないから、多分子供にもうまく説明できるであろう。平易な表現と随所に示された議論を補足する図解やグラフにより、読者に対する説得力が非常に高いのである。
 本書の詳細な論をここでうまく示すことはできないので、案ずるよりも是非本書を読んでもらいたい。☆☆☆☆

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