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2005.04.06

[書評] コンスタンティノープルの陥落

塩野 七生:コンスタンティノープルの陥落,新潮社,1983

コンスタンティノープルの陥落代 この本を読もうと思った理由は2つ。1つはローマ人の物語シリーズの巻末に、この著者の過去の著作が載っていたこと。もう1つは今年トルコへ旅行に行こうと思っていることである。現在のトルコの領土は、紀元前1世紀にローマの版図に入って以来、その後ローマの分家であるビザンチン帝国に引き継がれ、本書がテーマとする1453年5月29日にオスマン・トルコ軍によってコンスタンティノープルが陥落するまで、まさしくヨーロッパであった。
 ローマ人の物語を大変面白く感じている私としては、同じ著者の本書に大変期待していたのだが、読後感は今ひとつであった。「その時、歴史が動いた」ではないが、コンスタンティノープルがヨーロッパで無くなった日を描いていることから、歴史上の重要性は最大限と言って良い。しかしその出来事を忠実に伝えようとしているのか、人物の喜怒哀楽があまり伝わってこない。守るビザンチン帝国皇帝コンスタンティヌス十一世の人物像は伝わってくるのだが、攻めるオスマン・トルコのスルタン(皇帝)マホメッド二世の言葉は「あの街をください」しかなく、人間らしくない。
 現在のトルコはEUに加盟したいと言っているが、ヨーロッパでないという理由で既加盟国から反対されている。EU加盟の要件は具体的には知らないが、地理的にはイスタンブールも含めて現トルコの領土の一部はバルカン半島にあり、ヨーロッパの一部と言える。しかし心情的には、キリスト教であるかという部分の方が大きいように思う。このコンスタンティノープルの陥落=ビザンチン帝国の滅亡によって、この土地はキリスト教徒の領土で無くなり、それはつまりヨーロッパではないということになった。こういう歴史的背景を知ると、現在のEU加盟反対は550年前の出来事を持ち出して復讐しているようにも思える。
 この歴史の舞台となったコンスタンティノープル、現イスタンブールはヨーロッパとアジアを繋ぎ、有史以来のほとんど全ての時代で世界の最重要都市であった。歴史を学んでからその土地を訪れるのはまた格別な思いがある。☆☆☆

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» 1冊あたり10円 [FCお茶の里]
僕にとって新潮文庫はローマ人の物語とほぼ同義なわけです。 1巻を買ったのが確か2003年の1月で、今読みかけが4巻の 途中なのでほぼ半年に1冊のペース。遅!っていうか旬がある 本ではないので、つい先送りで他の本を読んでしまうのです。 「今」読まなくてもいい、普遍性のある本というのもある意味罪だね~。 で、書店で文庫を買う時いつも裁断が雑だな~と思っていたのですが、 ちゃんと理由がありました。 確かに文庫に限らずスピンがあるのと無いのとでは全く、便利度が違う。 洒落た栞を使う楽しみもあるけど、1冊... [続きを読む]

受信: 2005.04.19 19:56

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