« 風船一揆復興乃陣 | トップページ | [書評] ローマ人の物語VI パクス・ロマーナ »

2005.02.23

[書評] 確率と統計のパラドックス

スティーヴン・セン:確率と統計のパラドックス,青土社,2004

確率と統計のパラドックス 最近、確率・統計を題材にした本やパラドックスを扱った本は、興味があってそれぞれいくつか読んでいる(確率・統計で世界を読む統計学でリスクと向き合うパラドックス大全)。そこで見つけた本書である。原題は全く違うのだが、興味の対象を足したような和題にピッタリフィットして買った。
 確率・統計は、感覚的に正しいと思っていることが実は誤っていたり、もしくはその逆だったりを無機質に表現してしまうので、それ自体がパラドックスとも言える。本書の内容は、パラドックスそのものが取り上げられているわけではなくて、上記のような意味に捉えるのが適当である。数学的な専門書以外の確率・統計を扱った本は、一般の人に確率・統計を理解してもらうことを目的に、ともすればハウツー本的に平易に書かれているのが普通である。また「数字に弱いあなたの驚くほど危険な生活」のように、知らないと大変なことになるよと押しつけがましい本もある。
 本書の著者は医学統計学者で、そう言う意味では扱う題材も「数字に弱い~」とほぼ同一である。しかし本書の内容はだいぶ高度で、新薬の臨床試験結果からその効果の有意性を示すといった著者の日々の格闘の中から、逆説的な事柄を取り上げている。数式もところどころに出てくるし、数学的に難しい説明もある。だから確率・統計、特に検定や尤度といったことに、より知識を持ってから読めばさらに面白かったのではないかと思う。
 本書では非常に多くの数学的な定理や手法が、必要なところで順を追って取り上げられている。初登場の際にはその説明するが、その定理や手法に関わった人物のエピソードを、なぜか必ずその生まれ育ちから紹介している。定理・手法そのものにまつわるエピソードとしても、パスカルの三角形やポアソン分布はどちらも本人が発見したものではないとか、脱線話も結構面白い。
 昨今のテレビ番組では、2人や3人に試してダイエットの効果ありというような、安易な臨床試験が氾濫している。しかし効果があるのかないのか、副作用に対して安全か危険か、現実はそんなに簡単に割り切れるものではない。結論を出すにも正確な手法が要求される。そんな割り切れないものを割り切る数学的な手法を伝えるのが本書である。本来数字の前にはたくさんのただし書きがある。しかし情報の伝え手は数字だけを一人歩きさせる。そんな一人歩きした数字に一喜一憂している情報の受け取り側は、なんて安穏としているのだろう。☆☆☆☆

|

« 風船一揆復興乃陣 | トップページ | [書評] ローマ人の物語VI パクス・ロマーナ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/19205/3045488

この記事へのトラックバック一覧です: [書評] 確率と統計のパラドックス:

» 『ノーベル賞経済学者の大罪』(1) [だにえるblog]
ノーベル賞経済学者の大罪ディアドラ・N. マクロスキー Deirdre N. M... [続きを読む]

受信: 2005.09.20 22:28

« 風船一揆復興乃陣 | トップページ | [書評] ローマ人の物語VI パクス・ロマーナ »