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2005.01.11

[書評] 耐震建築の考え方

神田 順:耐震建築の考え方,岩波書店,1997

耐震建築の考え方 著者の神田先生は、直接話したことはないけれどもよく知っている先生なので、恐れ多くて書評を書くのは気が引ける。神田先生が書いた専門書も読んだことがあるが、本書は一般向けに書かれているので、取り立てて新しく知ったことはなく、書名の通り「考え方」が普通の人が使う言葉で書かれている。耐震建築の考え方のうち、一般の人に知っておいてもらいたい事柄として、技術論ではなく精神論を訴えているように私には思える。
 一般の人は特に大災害などを目の当たりにすると、お金を掛ける掛けないに関わらず絶対に安全にして欲しいと思うに違いない。しかしそれはあり得ない。この本で述べられている私が最も重要だと思った考え方(精神論)は、絶対は安全はないということと、経済性と秤に掛けて安全性を決定しているのだということである。これまで「由らしむべし、知らしむべからず。」として絶対安全神話が存在してきた。だがそれは幻想である。絶対安全が存在せず、お金の掛け具合で安全性が異なるのだとすれば、どこかで安全性の程度を決定しなければならない。でもよく解らない。安全性の程度について、判断したくないし責任も取りたくない。そこで著者はこう言う。

権威ある人から、「『絶対大丈夫』と言って欲しい」「そのかわり責任を取って下さい」という時代ではないように思うのです。

 残念ながら、このような言葉は建物のオーナーはもちろん、構造技術者も本音としてはある。指針などで決められた通りに設計し、失敗したときには指針のせいにして逃げたいのだ。だから最近の性能設計という考え方は、よほど自信がある設計者以外には評判が良くないと思う。そして設計者から見ると、大学の先生が判断を避けて逃げているように見えるのだと思う。
 この本は兵庫県南部地震以後に書かれているけれども、もう8年も前である。昨今PMLを代表に、地震リスクをお金で換算する仕組みが出来つつあるが、概念はこの頃にもあったんだと少し意外に思った。さすが神田先生。神田先生は確率とか信頼性とか、この手の第一人者なのだ。
 今月の17日は兵庫県南部地震の発生から丸10年となる。あの日以降耐震設計は大きく変わった。ひとつの区切りとして、また多くの行事が組まれるのであろう。☆☆☆

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