« 第18回風工学シンポジウム | トップページ | [書評] 量子コンピュータとは何か »

2004.12.27

[書評] パラドックス大全

ウィリアム・パウンドストーン:パラドックス大全,青土社,2004

パラドックス大全 パラドックスに関する本は以前にも読んだことがあるが、紙一重なのである。何が紙一重かと言うと、面白く感じるか否かがである。パラドックスというのはそもそも考え出したら夜も眠れなくなるような頭を悩ますものであって、明快な答えが出せない(出しにくい)ものである。しかも思考実験の類が多い。だから読者の頭の中はぐちゃぐちゃで、読後もスッキリしないのである。こんな状態を面白いと思えるように書き進めるのは非常に困難な仕事である。パラドックスを解りやすく紹介するという命題こそがパラドックスなのだ。
 本屋でこの本を見かけたときに相当中身を吟味したが、決め手はこの著者が「囚人のジレンマ」,青土社,1995を書いた人であるということで、囚人のジレンマもパラドックスのひとつに数えられるが、なかなか面白く読んだのを思い出したからである。もっとも本書の原著は1988年であり、日本での訳出の順序が入れ替わったが、もともとは本書の方が先に書かれたようである。
 中身は12章+中仕切りに分かれている。古典的なロジックのみのパラドックスだけでなく、第9章にはNP完全問題が登場する。これは1つ1つ手順をたどれば必ず答えが見つかるが、その1つ1つの手順をたどることが理論的にというより現実的に不可能な問題である。例として、陽子の大きさのコンピータが宇宙全体に拡がり、宇宙の始まりから終わりまで計算しても10168回だそうで、これは論述相互の矛盾の有無(充足可能性)を検証するのにたった558個の論述しか計算できないそうである。いわゆる組合せ爆発というコンピュータ時代のパラドックスである。
 古典的なパラドックスから新しいパラドックスまで、様々の分野のパラドックスが集められているが、パラドックスらしくいずれも理屈なのか屁理屈なのかよく解らないものばかりである。ただひとつのパラドックスがよく解らなくても章が変わると題材が異なるので、全てがよく解らないわけではない。逆に自分の頭の中で説明ができている既知のパラドックスについては、必要以上に面白いと感じたりするのも、他人が知らないことを自分だけが理解しているという優越感に関係するのかもしれない。☆☆☆

|

« 第18回風工学シンポジウム | トップページ | [書評] 量子コンピュータとは何か »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/19205/2388221

この記事へのトラックバック一覧です: [書評] パラドックス大全:

« 第18回風工学シンポジウム | トップページ | [書評] 量子コンピュータとは何か »