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2004.11.15

[書評] 5万年前に人類に何が起きたか?

リチャード・クライン,ブレイク・エドガー:5万年前に人類に何が起きたか?,新書館,2004

5万年前に人類に何が起きたか? 人類の起源は200万年前とも700万年前とも言われるが、この本では骨格や石器などの証拠をもとに現代に向かって人類の歴史をたどっていく。日本語訳のタイトルとは異なり、決して5万年前のことを中心に書いているわけではない。
 人類の起源をいつとするかは、そもそも何を人類の定義とするかによるということを認識しなければならない。一言で人類と言っても、いくつもの段階があるからである。ヒトとは脊椎動物門哺乳綱サル目ヒト科ヒト属(ホモ属)ヒト種(サピエンス種)であり、現存する生物としてはサル目までさかのぼらないとヒトに最も近い生物に出会うことができない。つまりヒトの始まりと言うとき、それはサル(サル目)との別れなのか、ホモ属の始まりなのか、現代人と交配が可能なサピエンス種(種が異なっても同属であれば交配可能な場合もあるが、サピエンス種が他のホモ属と交配できたかはわかっていないようである)のことを指すのかをはっきりさせなければならない。これらは猿人,原人(旧人),新人(現生人)などと区分けすることもあるようである。現在の人類学では、ヒト科(猿人)の始まりが500~700万年前にアフリカで起こり、ホモ属(原人)の始まりが200万年前頃にあり、10万年前頃にサピエンス種が再度アフリカで生まれたとされている。ポイントとなるのは原人時代にユーラシア大陸に拡がって我々にも知られている、ジャワ原人,北京原人,ネアンデルタール人などは、ホモ属ではあるがサピエンス種とは異なる種であり、後にアフリカで生まれたサピエンス種(クロマニヨン人)に滅ぼされてしまったということである。5万年前にアフリカを出たサピエンス種は、ユーラシア大陸にとどまらず、オーストラリア大陸や北米・南米大陸を含む全世界に進出した。つまり現在の中国人が北京原人の、欧州人がネアンデルタール人の子孫であるということではなく、白人も黒人も皆全ての世界中の人類の祖先は、わずか5~10万年に居るということである。
 初めは、遺跡の発掘された地名や研究者である西洋人の名前、アウストラ~などの学名がカタカナとしてたくさん出てくるので、読みにくかった。しかし頭の中で整理できてくると面白くなってきた。現在進行中の研究であるので、結論としてはっきり言えていないのが残念であるが、科学というものを真摯に受け止めれば、結論がなくてもそれは仕方がないとも言える。むしろ(毎度書いているが)、著者の付けたタイトル(当然最も述べたいことを表しているはず)を無視した仰々しい日本語訳のタイトルを付けている、出版社の無能さに相変わらず呆れるばかりである。☆☆☆

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