[書評] 文明の衝突と21世紀の日本
サミュエル・ハンチントン:文明の衝突と21世紀の日本,集英社,2000
1989年のベルリンの壁崩壊を象徴とする冷戦構造の終焉は、民主主義社会および資本主義経済の勝利として、この秩序がグローバルに展開すると、多くの人が楽観的に考えていたに違いない。しかし現在の、著者が言うところの一極・多極体制は、東西二極体制に比べて、果たして安定した国際情勢になったと言えるだろうか?。人々が互いに親しいと感じたり敵対したりするのは、何も社会体制やイデオロギー(政治的思想)だけではない。人間は他人との比較においてアイデンティティ(自己認識)を持ち、民族・言語・歴史・宗教・生活習慣・価値観といった結びつきで帰属意識を感じる。著者はこれらの集合体を広い意味で文明と呼び、現在の世界に存在する主要文明として、7つないしは8つを挙げている。そして現在の国際情勢は国家間の関係ではなく、これらの文明間の関係であると論じている。人々の帰属する国家の政府がある日突然転覆することはあっても、文明が一朝一夕に変化したり滅びたりすることはない。人々が帰属意識を持つのはより普遍的な文明であるから、文明内の問題であれば、同じ文明に属するリーダーが導くべきであり、他の文明が口を出すべきではない。また最も懸念されるのは、自らの文明のみが最高であり世界がその単一文明になるべきと考える、文明間の衝突である。
この本は2000年の発売であり、もちろんイラク戦争の勃発前である。社会(世界)情勢を論じた本は、数年後には読むに耐えなくなる本もあるが、この本が示した分析通りに世の中が進んでしまうと、発売された同時代に読むよりも、現実の分だけその説得力に重みを増している。巻末の「解題」と題した京都大学教授の中西輝政氏による解説も明快であり、著者の太鼓持ちでもなく、読み応えがある。☆☆☆
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